東京家庭裁判所 昭和41年(家)1267号 審判 1966年4月08日
国籍 アメリカ合衆国 住所 東京都
申立人 ヤスオ・トエダ(仮名)
本籍 静岡市 住所 申立人に同じ
未成年者 山本春子(仮名)
主文
未成年者山本春子の特別代理人に外村義男(住所東京都豊島区○○○五丁目二二番一二号)を選任する。
理由
本件申立の要旨は、被相続人山本みえの遺産分割協議をするにつき、相続人である申立人は、同じく相続人である未成年者山本春子の父であり、利益相反関係にあるから、同女のため特別代理人を選任されたいというにある。
当裁判所の取調べの結果、申立人はアメリカ合衆国オアフ島ホノルルで出生したいわゆる日本人二世であり、昭和二八年一二月一七日とみと婚姻し、その間に春子(昭和二三年三月二五日生。同二八年一二月一七日準正により嫡出子の身分取得)を儲けたが同三〇年六月七日協議離婚し、同年一一月二九日日本国籍を離脱した後、同四〇年二月一七日再度みえと婚姻し、同年四月一六日とみ死亡時に及んだものであり、とみとの最初の婚姻以来日本に居住し続けている。
以上みてきたとおり、本件は申立人が米国国籍を有する外国人であるから、直ちに民法第八二六条を以て規律することを得ず、いわゆる渉外事件としてその裁判管轄及び準拠法を決定すべきである。然るところ、未成年者春子は日本人であるのみならず、申立人ともども日本に住所を有していることからみても、日本の裁判所に裁判管轄権あることは疑いをいれないところであり、その準拠法については、本件がみえの死亡によるその相続をめぐつて生起した父と子の利益相反の問題として、果して申立人は未成年者春子の親権者として同女を適法に代理して遺産分割の協議に関与し得る資格があるかどうかが問われるのであるから、一見親子間の法律関係として法例第二〇条によるべきようにも思われるが遡つて相続の関係として、法例第二五条によるべきが相当と考える。
そこで本件は、法例第二五条に則り、被相続人であるとみの本国法即ち日本法に準拠すべきこととなるか、日本法によれば本件事案の如き場合、上記民法の規定によつて未成年者のため特別代理人を選任すべきであるから、諸般の事情を検討した上、申立人と年来の知己である外村義男を未成年者春子の特別代理人に選任するのを適当と認め、主文のとおり審判する。
(家事審判官 高野耕一)